ブルージャスミン

ウディ・アレンの映画には2種類ある。にやっと笑えるシニカルなドラマか、シリアスでシニカルなドラマか。個人的には前者の代表は「アニー・ホール」か「夫たち・妻たち」、後者の代表は「私の中の6人の他人」もしくは「マッチ・ポイント」だと思っているのだが(でも世間的には「インテリア」なんだろうな…)ここのところ一番好きなウディ・アレンの作品は何かと聞かれたら、後者にあたるこの「ブルージャスミン」だ。

この映画もこなし映画リストに加えていいと思う。主人公自身が養女だし、自分の子供はおらず、死んだ夫の連れ子とも縁がない。
金持ちから転落した浅はかな女の物語、と言ってしまえばそれまでだが、何度も何度も観てしまう。
古今東西、こういうテーマの文学は履いて捨てるほどあるし、日本でも特に平安文学とかに沢山ありそうだ。
この映画から通り一遍の教訓を得てみたりすることは簡単だけど、正直、私にとってそんなことはどうでもいい。

私が好きなのはファッション!そしてケイト・ブランシェットの美しさ!
ジャスミンのファッション、持ち物、着こなし。お金持ち時代のハイブランドのお洋服だけど、同じ服を異なる場面で何度も着て登場するのだけど、それが彼女の今の境遇を如実に表している。
更に過去のエピソードに登場する友人や夫の愛人達のジュエリーのえげつないことといったら!
モデル事務所を経営してるという夫の浮気相手の女性は、ヴァンクリのアルハンブラのロングネックレスを3本重ね付けしている。
ファッション誌でもなかなかみないような贅沢さなのだけど、それがゴージャスなイタリア系美人にものすごく似合ってて、「普通」のオシャレに見えてしまう。
あぁ、やっぱりヴァンクリの甘ったるいデザインは、こういう大人顔の女性の為のものなんだなぁって改めて思い知らされる。日本人はカワイイものが好きだからアルハンブラ大好きで、アラサーの子なんて3人に1人は持ってそうな感じだけど、子供顔がお花モチーフつけてたら、どんだけハイブランドジュエリーでもおもちゃにしか見えないんだよな・・・ま、彼女たちにとってはただの記号なんだから、似合う似合わないは二の次なんですけどね・・・でも、つらいわ。
彼女たちのダイヤのリングは軽く5ctはありそうで、あんなの節ばった長い指にしか絶対に似合わない。日本人のきゃしゃでふくよかな指もまたそれはそれで良いものだけど、それに5ctじゃ、やっぱり大きすぎて「下品」にしかならないんだよなぁ。
裁判所に何もかも差し押さえられてしまったジャスミンが身を寄せた妹の家で、ファーストクラスに乗って来たことを責められた時のシーンで「贅沢が見についてるから仕方ないのよ!このスーツケースだってヴィトンだけどイニシャルが入ってるから売れやしないから持ってるだけよ!グラフやヴァンクリなんて馬鹿みたいに高いのに売るときは二束三文で全然お金にならないんだから!」と怒鳴るシーンなんてニヤニヤしちゃったわ。

アレン監督はジャスミンを哀れな女として描いているのかもしれないけど、女性ならジャスミンの気持ちがわかるっていう人、沢山いるだろうし、皆、多かれ少なかれジャスミン要素を持ってるはずだ。
「マッチ・ポイント」は男のどうしようもなく馬鹿な部分を描いていたし、「ブルージャスミン」は女のどうしようもなく愚かな部分を描いていると思う。だから私はどちらの作品もとても好きなんだと思う。