東京の夫婦

東京の夫婦、ようやく図書館の貸出の順番が回ってきて読了。
思った以上に、子供を持たない夫婦、というのが前面に出ている作品。
子供を持たないことを声高に主張しなければいけないほど、松尾がその事にわだかまりを抱いているということなのだろう。葛藤があるから書く。書かずにはいられない。
松尾の妻は、欲しくないという人の子供を産んでも仕方ないから、子供を持たないことに同意したという。それは言い換えれば、欲しいと思う相手とであれば子供が欲しいということだ。以前も書いたが、若い頃はあまり深くその事を考えないだろう。ましてや松尾スズキという歳の離れた著名な舞台監督との結婚なのだ。目の前のおやつを選ぶなという方が酷だろう。
だが、本当に親になるチャンスを失いそうになる時、まだ見ぬ我が子への思いと、長年連れ添った伴侶への思いとどちらが勝るだろうか。福祉大学で介護などを学んだという女性であれば尚のことではないか。

さて、私がここで他人の嫁にやきもきする理由は何だろう。
それは彼女の事を案じているからでは決してない。
私が案じるのは嫁の強い希望に信念を曲げて松尾が子供を作ることに同意する日が来ることだ。
そんな時、絶対に失われた時間が戻らない女といつでもやり直せる男の生理の違いに苛立たずにはいられないのだ。

だから、男の言葉など、信じられない、と思ってしまう。

東京の夫婦

東京の夫婦