ダイアン・キートン
正直、彼女がここまで生き残る女優になるとは全く想像していなかった。
私が彼女を最初に意識したのはもちろん「アニー・ホール」だったわけだが、それ以上に何度も観た作品は、同じ年に公開された「ミスター・グッドバーを探して」だ。
当時、もちろんVHSで観たわけだが、主題歌のマリーナ・ショウの気だるいジャズの音楽と共に一発で心を鷲掴みにされてしまった。
それ以上に好きだったのがジェーン・フォンダの「コール・ガール」だったので、私は都会で一人で生きる孤独な女とSEXと暴力、というテーマになぜだが惹きつけられていたのだろう。
その後のダイアン・キートンはウディ・アレン映画にはお馴染みの配役であったが、特に印象には残っていない。いつも個性的なファッションで、ポケットに手を突っ込んで歩くスノッブな都会的な女性というくらいのイメージ。
私の中では、ダイアン・キートンは自然体で、知的で、センスが良くて、男性よりもむしろ女性に好かれるタイプという印象なのだが、彼女の恋愛遍歴を見てみると意外とモテているのである。ウディ・アレン、ウォーレン・ベイティ、アル・パチーノとくるのだから、相当なやり手だ。ウディ・アレンという監督は単なるロリコンおやじじゃない、本当にいい女(男が好きな女)がわかってる、ということだけはよくわかった。(ミア・ファローなんて21歳の時に50歳のフランク・シナトラと結婚したのだから、相当な小悪魔だ。)
彼女はそのキャリアでコンスタントに売れ筋の作品に出続けている。本当に息の長い女優だ。
しかもここにきて再びブレイクしているといっても良いのではないか。
特に「恋愛適齢期」のダイアン・キートンは綺麗といっても良いくらいだった。
人生にはモテ期が2回あるというが、「恋愛適齢期」の頃の彼女は間違いなく第二モテ期だったはずだ。
(もっとも公開当時は「どんだけオバサンの妄想ストーリーだよ」とむしろ失笑してたくらいなのだが。今、観直してみると、キアヌ・リーブス演じるハンサムな医師は36歳という設定なのだから、仏大統領のマクロンとブリジットの馴初めに比べたら全然大した妄想でもないのである。)
最近の作品では、「最高の人生のつくり方」が良かった。夫に先立たれた初老の女性(リア)と、妻に先立たれた初老の男性(オーレン)の恋愛物語。監督はあのロブ・ライナー!とくれば、面白くない訳がない。
オーレンを演じるのはマイケル・ダグラス。ヤリチン役をやらせたら右に出るものがいなかったあのマイケル・ダグラスもすっかりお爺ちゃんになって、身体を壊したこともあってかすっかり痩せてしまって心配になるくらいである。
ダイアン・キートン演じるリアは元舞台女優で、今はラウンジ歌手を目指しているという設定なのだが、彼女の唄う「the shadow of your smile」が本当に素敵で、何度聞いても涙が出る。
この作品の中で彼女はオーレンに「どうして子供をつくらなかったんだ?」と聞かれて、こんな風に答える。
「私も夫も若いころは売れない役者で、目の前の仕事に一生懸命だった。気が付いたら40歳になってた。そのころたまたま妊娠した。良い母親になれるかわからなかったけど・・・流産したから、それ以来子供のことは考えなくなったわ。」
このセリフを聞くと、観客はどうしてもリアをダイアン自身に重ねてしまう。
そして、子供をもたなかった女性は、リアを自分自身に重ねるだろう。
ダイアンは一度も結婚したことがないが、50歳を過ぎて2人の養子をとったそうだ。